近年は出産をする際に「無痛分娩」を選択する人が増えてきました。
筆者もその一人で、33歳で第一子を無痛分娩で出産しました。
しかしまだまだ日本ではメジャーな分娩方法ではないため、「一体どんな流れで出産するの?」「本当に痛みはないの?」と、気になることは多いと思います。
本記事では、無痛分娩を選択するか迷っている方、無痛分娩を選択したけどどんな流れになるのか事前にイメトレをしたい!という方に向けて、
筆者の無痛分娩の体験談を紹介します。
「計画無痛分娩」を選択した筆者ですが、なんと結果的に「計画」でも「無痛」でもない出産となりました…。
計画通りにいかないのが出産です。あくまで一例として、参考にしていただけますと幸いです。
計画無痛分娩とは
- 無痛分娩とは
まず、「無痛分娩」とは、麻酔薬を使用する分娩方法です。
「硬膜外腔」という背中の脊髄の近い場所に局所麻酔薬と、多くの場合それに医療用麻酔を加えたものを投与します。
とても強い鎮痛効果があり、薬の母体への影響が少なく、さらに胎盤を通って赤ちゃんへ薬が届くことがほとんどないため、多くの国で選択される方法です。
局所麻酔のため意識もはっきりした状態で出産することが可能です。 - 「計画」無痛分娩とは
麻酔を使用する無痛分娩のうち、「計画」無痛分娩という方法がありますが、
これはあらかじめ出産をする日を決めておき、予定日に陣痛促進剤を使って人工的にお産を始める方法です。
無痛分娩の中でも計画無痛分娩と、自然に陣痛が始まるのを待ち無痛分娩となる方法、どちらの方法になるかは病院の方針によります。
計画かどうかは出産予定の病院に確認するようにしましょう。
筆者の場合は直前に予定を決める計画分娩だった
筆者が出産した病院の場合、「計画」無痛分娩でしたが、予定日は妊娠の経過を見ながら直前に決める方針を取っていました。
なんとなくイメージでは初期の段階で無痛分娩の日を予約すると思っていたので、
計画と言いつつも直前にならないと予定がわからずドキドキしていました。
筆者の場合、36週の検診の時点でもまだ予定日は決まっておらず、
医師からは「まだ赤ちゃんが降りてきていないから、この様子だと予定日(40週)くらいになると思う。来週(37週時点)の検診で入院日を決めようか。」と説明されました。
方針は病院によって異なるため、予定日が決まるタイミングについては通院している病院に確認してみましょう。
【出産レポ】計画前に37週0日で破水・・!
36週の検診時点で医師にまだかかるだろうと言われていた筆者は、
生まれるのはまだ先だと思い残りのマタニティライフをのんびりとのんきに過ごしていました・・。
そして分娩日を決めると言われていた37週の検診当日の朝4時頃、つーんとした腹痛が一瞬あったなと思った次の瞬間、なんと破水・・!
この瞬間は尿漏れ程度の少量の破水でしたが、明らかに尿漏れではないことは感覚的にわかりました。
慌てて寝ている夫を起こして破水したことを伝えてトイレに駆け込むと、ドバドバと羊水が出てきます。
破水した場合は病院に電話するように指示されていたため、トイレにこもったまま病院に電話しました。
破水したことを伝えると、入院する用意をしてすぐに病院に来るようにということでした。
破水しているため夜用のナプキンを当て、念のためバスタオルをお尻に巻いて夫の運転で病院へ向かいました(自宅から車で5分程度の近い病院でした)。
【出産レポ】病院到着。陣痛らしき痛みが始まる・・?
朝5時頃病院に到着し陣痛室へ案内されてからは入院着、産褥ショーツに着替えをして子宮口を確認してもらうと1.5cm。
そのまま待機するよう伝えられました。
この時点でも羊水はドバドバと出ているためお腹の赤ちゃんは大丈夫なのか・・?とドキドキ。
5時半頃になると軽い生理痛のような不規則な痛みが始まりました。
初めての出産でよくわかりませんでしたが、おそらくこれが陣痛の始まりでした。
それから病院が忙しかったようでしばらく待った後、点滴(水分と抗生物質(羊水からの感染を防ぐもの))とモニターを付けに助産師さんが来てくれました。
モニターで赤ちゃんの心拍を確認できて一安心。
7:30頃には朝食を食べる余裕もありました。
麻酔の前処置は9:00以降になると説明がありました。
おそらく麻酔担当医の出勤を待っていたのだと思います。
【出産レポ】麻酔の前処置で不安が・・・
朝食後にはちょっとうとうとしながら休息をし、
9:30頃には麻酔の処置前の血圧・体温測定を行いました。
問題なかったのでLDR室(分娩室)にいったん移動し、麻酔の処置を開始します。
麻酔の前処置では、まず皮膚の痛み止めを行い、それから背中の奥に薬を注入するために細い管を入れます。
ほぼ裸の状態でベッド上に横向きに寝て、背中を丸めますが、この姿勢が意外と難しい・・。
「あごを引いてお腹を引っ込めて、背中を丸めるイメージ」と言われますが、
お腹に赤ちゃんがいる状態でお腹を引っ込めるのがなかなか苦しく、
背中を丸めているつもりでも「もっと丸めて~」と言われて難しかったです・・
そして針を刺す瞬間はちくっと痛みがあり、
管を通している”ぐいっぐいっ”という感覚もまあまあ痛かったです。
(いてててて・・・という声が出てしまうくらい)
おそらく背中から腰の方にかけて3か所くらい、ちくっと針を刺されて管を通していく感覚がありました。
そしてここから想定外のことが・・
背中の方は管が順調に通ったようですが、腰の下の方の処置がなかなかうまくいかなかったようなんです・・。
はじめに担当してくれた医師が別の医師をサポートに呼びました。
そしてそのサポートに来た医師も難しかったようで、また別の医師を呼び・・(不安が募る)
3名の医師が来てようやく、管を通すことができました。
この麻酔の管を入れる作業は数分~10分程度と言われていましたが、筆者の場合30分以上かかりました・・。
姿勢も苦しく、痛みにも耐えていたため、この前処置で汗だくに・・・。
助産師さんがうちわであおぎながら励ましてくれていました・・。
医師が言うには、管を入れるのが難しい珍しいタイプの背中だったようです(泣)
「長かったね、本当にお疲れ様!」と医師と助産師さんに言われながら前処置が終わりましたが、
この時点で結構な疲労具合・・そして果たして麻酔は問題ないのかと少し不安が残ります。
麻酔の処置が終わった時点で子宮口はまだ2cmでした。
【出産レポ】本格的に陣痛が始まり麻酔を入れてもらったけど、効かない・・?
麻酔の処置が終わって10時過ぎに陣痛室に戻り、モニターを再開。
生理痛らしき地味な痛みは相変わらず不定期に感じますが、
モニター上では張りがなく、陣痛は始まっていない様子です。
11時、いよいよ陣痛促進剤を開始します。
助産師からは、
「促進剤は入れるけど、初産でしかもまだ37週0日だから、陣痛の進みが遅いかもしれない。
明日まで進まなかったら帝王切開になる可能性もあります。」と言われました。
12時、お昼ご飯を食べますが、このあたりから徐々に痛みが強くなってきました。
生理痛のような、ただお腹というより腰に痛みが強い印象でした。
間隔をはかってみると、すでに3~5分間隔です。
13時、子宮口を確認してもらいますが変わらず2cm。まだ麻酔は入れません。
13時15分、このあたりから痛みのレベルが上がり、耐えられなくなってきたので、麻酔をお願いし開始してもらいました。
麻酔は少量から始め、効いてくるまで30分ほどかかります。
13時45分、子宮口は3.5cm。
麻酔を開始して30分ほど経ちましたがあまり効いている感じがせず・・
ただ痛みはどんどん増す一方で耐えられず、麻酔を追加してほしいとお願いしました。
夫や家族とLINEのやり取りをしていましたが、このあたりからLINEする余裕がなくなりました。
1分ほど続く強烈な痛みが、3分間隔で来ます。
3分の休憩ではまったく余裕がありませんでした・・。
14時30分、麻酔開始から約1時間、ここでようやく効いてくる感覚がありました。
子宮口は変わらず3.5cm。だけど順調に降りてきていると言われました。
しかし・・・麻酔が効いてきたのは右下半身のみ・・。左半分は強い痛みが続きます。
助産師さんに左半分に麻酔が効いていないことを伝えると、医師を呼んでくれました。
医師が背中の管を調整してくれて、少し左側にも効いてきた感覚がありましたが、
完全には効かず、感覚としては腰の左側3分の1程度が激痛です。
これ以上は調整ができず、「こういうケースもある」という説明でした。
麻酔の前処置に時間がかかったときに感じた嫌な予感が的中しました・・。
体の右側にはしっかり麻酔が効いているとはいえ、左側の痛みには耐えられず、
波が来ると目をつぶって深呼吸に集中し、ひたすら痛みが逃げるのを待つということを繰り返しました・・。
【出産レポ】痛みがあるまま子宮口は全開に
15時、陣痛の感覚が2分程度に縮まります。
体の右側は背中から足先まで、ほとんど感覚がなくなり、自分の意思で動かすことができない状態までになりました。
左側は相変わらず、腰に激痛を感じ、ひたすら目を閉じて深呼吸に集中します。
深呼吸以外は何もできない状態でした。
楽な体勢を探すにも、体勢を変えることすらできません。
少しでも動くのが怖いほど、波の間隔が短く、痛かったです。
妊娠中にいろいろな無痛分娩の体験談で「会話やLINEもする余裕がある」と見ていましたが、
そのような余裕は1ミリもありませんでした・・。
16時15分、子宮口が6cmまで開き、分娩室へ移動することになりました。
ただ体の右側下半身が麻酔によりまったく言うことを聞かない状態だったため、
助産師さんに支えられながらなんとか車いすに乗り、移動しました。
分娩台の上にのぼるのも自力ではできず、支えられながらようやくのぼることができました。
16時30分、なぜか急に子宮口が9cmに!慌てて夫を呼びました。
病院から家は近いので夫はすぐに来てくれました。
16時45分、子宮口が全開に!
ただし、右足の感覚が全くありません。
助産師さんから「いきむときに力が入りやすいように、麻酔切りますね。麻酔が切れるまでに2時間はかかるから安心してください」と言われました。
本当に途中で麻酔が切れてしまわないか・・・?と、とても怖かったです・・(結果として大丈夫でした)
夫と一緒に力を合わせていよいよいきみ開始です!
【出産レポ】無事に出産!
腰の左側にずっと痛みを感じたままだったため、いきむタイミングはわかりやすかったです。
(無痛分娩だといきむタイミングがよく分からない、という話を聞きます)
ただ深夜の破水で眠っていなかったことと、想定外の痛みで体力がかなり削られており、
長くいきむこと(10~15秒)が難しかったです・・(練習をしっかりしていなかったことを後悔しました・・)
子宮口が全開になってからは肛門周りの痛みが強くなるといいますが、
ここは幸いにも麻酔が効いている箇所だったため、痛みはまったくありません。
そして少しずつコツをつかみ、夫や助産師さんに声掛けをしてもらいながら、
いきみ開始から約2時間、18時49分に長男が無事誕生しました!!!!
いきみ始めて2時間かかりました。これは初産婦の平均くらいだそうです。
分娩時間は約7時間、初産にしては早い方でした。
陣痛促進剤を開始してからのスピードがすごかったな、という印象です。
そしてようやく麻酔が効かなかった左側の腰の痛みからの解放です・・・
麻酔が効かなかったのは想定外でしたが、
半分でも、3分の2でも効いてくれてよかった・・!という感想でした。
「これが全く効いていなかったら・・」と考えるのが恐ろしいほど、痛かったです。
ただし痛みの感じ方、出産の進み方は人それぞれ。
あくまで筆者は、麻酔が半分以上効いている状態でも、耐え難い痛みでした・・・。
【出産レポ】麻酔はいつ切れる?産後の体の状態は?
赤ちゃんと胎盤を取り出した後は会陰切開の傷の縫合をしてもらいましたが、
麻酔が効いている箇所なのでまったく痛みはありませんでした。
そしてそれから約2時間、すぐには動かず分娩台の上で休みます。
21時頃に入院部屋へ移動する際、
この時点で麻酔を4時間前に切っているはずが、まだ右足の感覚はありませんでした。
そのためここでも助産師さんに支えられながら車いすに乗り、部屋まで移動しました。
結局麻酔が切れたと感じたのは深夜0時頃でした。
それまではトイレに一人で行くことも難しく、
ナースコールをして助産師さんに支えてもらっていました。
(ただし麻酔で尿意も感じづらく、トイレに行っても尿が出ない・・ということもありました)
麻酔が切れてからは・・とにかく会陰切開の縫合箇所の痛みとの闘いです。
これも傷の度合いなど個人差はあると思いますが、筆者はかなり苦しめられました・・・
円座クッションがないとどこにも座ることもできず(円座クッションでも痛い)、
寝ても覚めても痛い!という感じで、痛み止めを飲み続けました。
退院後も1週間ほどは痛み止めが手放せなかったです。
陣痛とはまた種類の異なる、長くつらい痛みとの闘いでした・・・。
まとめ
計画無痛分娩を選択した筆者ですが、計画前の破水、麻酔が完全に効かない、と想定外だらけの出産となりました。
無痛分娩を選択した方へ伝えたいことは、「無痛分娩にならない覚悟も必要」ということです。
何が起こるか分からないのが出産、とよく言いますが、身をもって体験できたのは良いことでした。
どんな分娩方法であれ、母子ともに健康で出産を終えられることが1番です。
その目標を第一に、妊娠中は様々なイメトレを行い想定外の事態にも動じない心構えをしておくことは大事だと思いました。
これから出産を控える方にとって、この記事は不安を煽るような内容だったかもしれませんが、
楽なお産はないと思います。
こんな場合もあるんだなと頭の片隅に置いておけるよう、少しでもこの記事が参考になっていれば幸いです。
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